台湾の2018年九合一選挙(中華民国統一地方選挙)について




来る11月24日は台湾の統一地方選挙です。「九合一選挙」と呼ばれ台湾では今とても盛り上がっています。複雑な政治的・歴史的背景から台湾では若者も政治への関心が高く、政治運動への参加も活発です。2014年の統一地方選挙のときも投票日当日に台湾在住の方がリアルタイムでレポートしている様子をネットで観ていたのですが、まるでライブイベントでもやってるかのような盛り上がり。テレビも選挙速報一色でとても興味深かったのを覚えています。というわけで今回の統一地方選挙についてちょっと考えてみましょう。
参考:107年地方公職人員選舉專區
※アイキャッチ画像及びページトップ画像は中央選舉委員會 HPより引用

九合一選挙とは?

来る11月24日に行われる統一地方選挙は通称「九合一選挙」と呼ばれています。なぜそう呼ばれるのかと言うと、台湾の直轄市長(1)及び市議会議員(2)、省轄縣市長(3)及び縣市議会議員(4)、郷鎮市長(5)及び郷鎮市民代表(6)、山地原住民区長(7)及び山地原住民区民代表(8)、村・里長(9)という9つの選挙を同時に行うからです。

省轄」という言葉が出てきますがこれは台湾省、福建省という2つの省を指しています。台湾の話題にちょっと明るい人なら「え?」と疑問を持ちますよね。その通り、現実的には台湾に「省」などあり得ないのです。実際台湾において「省」とうい機関は現在凍結されています。

この件は台湾の複雑な歴史によるもので、ここで説明すると長くなるので割愛します。いずれ詳しく書きたいと思いますが、興味のある人は調べてみてください。兎も角過去の名残でそのようになっているということです。

  行政区分 選出対象
1 直轄市 市長
2 市議会議員
3 省轄縣市 縣市長
4 縣市議会議員
5 鄉鎮市區 鄉鎮市區長
6 鄉鎮市區民代表
7 山地原住民區 山地原住民區長
8 區民代表
9 村・里 村・里長

同時に行われる公民投票に注目

公民投票法の改正により案件が増加

さて、今回の統一地方選挙で注目されているのが同時に行われる公民投票(国民投票)。その理由はなんと10件もの案件の投票が行われるからなのです。台湾で過去14年間に実施した公民投票の案件数が6件ということからも今回の件数がいかに多いかということがわかると思います。

というのも昨年(2017年)12月に改正「公民投票法」が可決された為、公民投票の発議、実施要件が大幅に緩和されたのです。また成立要件も緩和されているのでどのような結果になるか注目です。
参考:公投法三讀 滿18歲可公投 | 公投法三讀通過 | 要聞 | 聯合新聞網

◉発議の要件

  改正前 改正後
直近の正副総統選挙の有権者の 1,000分の1が発議に賛成 10,000の1が発議に賛成
5%の署名 1.5%の署名

◉成立の要件

  改正前 改正後
有権者の 2分の1以上が投票
有効投票数の 過半数の賛成 4分の1以上の賛成
反対票<賛成票

また行政院公民投票審議委員会の廃止、不在者投票が実施可能となる、さらに投票権も改正前の20歳以上から18歳以上に引き下げられました。これらの影響にも注目したいところです。
 

10項目の公民投票案件の内容について

では今回の公民投票の案件はどのようなものでしょう? 実は日本にも関わることがいくつかあるのです。以下が今回実施される公民投票の項目、第7案~第16案です。(第1案~第6案は過去実施済)

次案 内容 提案者 党籍
第7案 火力発電所の発電量について「毎年平均1%以上の引き下げ」により低減することに賛成するか否か。 盧秀燕 中國國民黨
第8案 「あらゆる火力発電所、発電機(深澳火力発電所の建設を含む)の新設、拡充を停止する」というエネルギー政策の策定に同意するか否か。 林徳福 中國國民黨
第9案 日本の福島第一原子力発電所事故に関わる福島県及び周辺4県(茨城県、栃木県、群馬県、千葉県)からの農産品、食料品の輸入禁止を継続することに同意するか否か。 郝龍斌 中國國民黨
第10案 民法による婚姻の要件が一男一女の組合せに限るべきであると規定されることに賛成するか? 游信義  
第11案 義務教育段階(小学校・中学校)において教育部及び各学校が性別平等教育法施行細則に定めるLGBT教育を実施すべきではないことに同意するか否か。 曽献瑩  
第12案 民法の婚姻規定に依らず同性の2人が永続的に共同生活を営む権利を保障することに同意するか否か。 曽献瑩  
第13案 「台湾(Taiwan)」の名称で全ての国際競技大会及び2020年東京オリンピックに参加申請するとに同意するか否か。 紀政  
第14案 民法の婚姻規定に基づき同性の2人による婚姻関係を保障することに同意するか否か。 苗博雅  
第15案 「性別平等教育法」に基づき義務教育の各段階において性別平等教育を実施し、且つその内容が感情教育、性教育、LGBT教育などに関する課程を含むべものであることに同意するか否か。 王鼎棫  
第16案 電業法(日本の電気事業法にあたる)第95条第1項の条文「全ての原子力発電所は2025年までに運用を停止しなければならない」を削除することに同意するか否か。 黃士修  

さまざまな案件がありますが電力やジェンダーに関するものが多いような気がします。この中で日本に関するものは第9案第13案ですね。

第9案については日本人としては反対してほしいものですが台湾の方が決めることなのでこればかりはなんとも言えません。

第13案は国際スポーツ大会での名称を「Chinese Taipei」から「台湾」へ変更しようということですね。たぶん日本人でも「Chinese Taipei」という名称に違和感を持っている人は多いのではないでしょうか。これは日本でも支持する動きがあり誰もが賛成すると思われるのですが、一方で国際オリンピック委員会(IOC)が公民投票について五輪憲章違反の疑いがあるとする警告文を台湾当局に伝えており、賛成が多数を占めた場合オリンピック参加資格が停止される可能性がある、とするなど緊張状態にあります。
参考:IOCが住民投票に警告、台湾、呼称変更要求で(日本経済新聞)
 

さまざまな人が意見表明

今回立候補している人をはじめ、さまざまな著名人、グループ、お店、さらには一般人までが公民投票における自身の主張をしています。このあたりは台湾の人々の政治に対する関心の高さが伺えます。

やはり第13案に対する賛成意見はよく見かけます。

一方、ロンドンオリンピック(2012)、リオデジャネイロオリンピック(2016)の重量挙げ女子53キロ級で2大会連続金メダルを獲得した許淑淨選手はIOCからの警告を危惧して反対を表明しています。

その他ジェンダー関連の案件に対する意見表明も多く見られます。

中には特定の案件を支持するコミュニティなども作られています。下は第13、14、15案に賛成する「131415大聯盟」というコミュニティ。

まとめ

統一地方選挙の結果も気になるところですが、今回は発議要件が緩和されたことによって一度に10件もの公民投票が実施されるということで、ちょっとこれまでとは違った雰囲気があります。

また、成立の要件も緩和されているので何件かは成立するのでは? 成立した場合に台湾の政治に与える影響がどのようになるのか? など気になるところがいろいろとあります。特に第13案など成立したはいいが台湾のオリンピック参加の障壁になるようでは元も子もありません。

また、日本に関わる案件についてもどのような結果になるのか気がかりですね。台湾の政治や文化に興味を持っている人は11月24日の統一地方選挙、公民投票の結果を注視してみてはどうでしょう。


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